■■Report #70 Report index


午前4時。
カーテンの隙間のわずかな明かりに目を覚ます。
何処まで来たのだろう。
まだ眠い目をこすり、うっすらと見える窓の向こうに目を凝らす。

まだ太陽の昇っていない山沿いを、列車は走っていた。
夜が明ける前の、彩度のないモノクロの世界。墨絵のような、幾重にも薄墨を重ねたような山々が遠く遠く連なっている。
その頂には白いものが―――あれは雪だろうか。
時折通過する、遮断機の信号の赤色が、妙に鮮やかだった。

雲の切れ間が白んで日の出が近くなると、色を取り戻した空が、鮮やかに染まり始める。
東の方から、桜色、山吹色、そして朱色と変わっていく。

薄く薄く、絵の具を溶いたような淡い色が、燃えるような鮮やかな色に変わるまで、ただ眺めていた。

ほんの十数分の出来事であったが、目が離せないで居た。
水の張られた田が延々と続き、その水面が空を映し、上にも、下にも空があるような、奇妙な景色。
 

静かに列車は走り続け、東へ向かう。
5月のこの時間、我々へなちょこ隊の住む広島県は、まだまだ闇の中である。
東へ向かうことで、一足先に朝を迎えに行っているような、太陽に向かって走っているような、そんな感じがした。



そんなゼイタクな時間を独り占めして楽しんでいると、カズ隊員がおもむろに顔を上げた。
しかしまだ眠いのか、膝の上でゴロゴロしている。
その余韻を楽しみながら、膝の上のカズ隊員をなでてやる。
いや、良いもの見たなぁ。
ゆっくりこんな時間をすごせるのも、車窓から朝日が眺められるのも、寝台特急ならではだ。
その後、タイチョーも目を覚ましたので、カーテンを全開にすると、一気に車内に光が差し込んできた。


5時過ぎ、日本海が見える。


日本海といえば、今乗っている夜行列車も「日本海」号である。
「日本海」は、日本海沿岸に敷設されたいわゆる「日本海縦貫線」のほぼ全線を走破する列車である。
東海道本線や北陸、信越、羽越、奥羽本線など複数の路線を跨いで走るのだ。

 日本海
 車窓からの景色を楽しむカズ隊員
 JRのマークもりんご
辺りがすっかり明るくなり、遠くに津軽富士とよばれる青森県の最高峰「岩木山」が見える。

ついに青森県まで来たのだ。

山裾にはリンゴの樹。
5月の青森は花の時期で、白い小さな花が流れていく。
普段リンゴの樹など見ることがないので、改めて「青森県にきたんだな〜」と感じる。
そして8時34分、定刻で終点「青森駅」に到着。
へなちょこ隊は、ついに青森の地に立ったのである。


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