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昔は動くホテルと言われたブルトレだが、今や動く孤島とまで言われているときき、食料と水分を多めに持ち込む。
自販機や車内販売もあるが、万が一を考えると、大人は我慢できても子供がね…。
そう思うと、必然的に大きな荷物になってしまった。
お、重い…。
弁当4つに、翌朝のパン、ペットボトルのお茶に、コーヒーに、そしてビール。
チビ共のおやつとつまみ。
食料だけでも相当な重さだった。

それに加えて、
「疲れた、だぁ〜っこぉ〜」
12キロの物体。
もうちょっとだから歩いてよ〜と思うが、車内でグズグズ言われては敵わない。

しかし10番ホームに上がり、目の前にブルートレインが見えた瞬間、おろせとばかりに足をばたつかせる。

憧れのブルートレインが、今目の前に…。

「富士」「はやぶさ」号は、機関車EF66の後に、スハネフ14、オロネ15、オハネ15など、合わせて12号車あるそうで、
スハネの「ス」は37.5トン以上〜42.5トン未満までの客車を示し、「ハネ」はB寝台、「フ」は車掌室があることを意味する。
オロネの
「オ」は32.5トン以上〜37.5トン未満、「ロネ」はA寝台。
ということは、オハネは、
32.5トン以上〜37.5トン未満のB寝台ということか。
ちょっとわかると、色々気になって、ホームでキョロキョロしながらカタカナを探す。
「キ」は機動車のキ、「ネ」は寝るのネ…なるほど。
イロハの順で、1等寝台、2等寝台、3等寝台だったそうだが、現在イは存在せず、ロがA寝台、ハがB寝台なのだそうだ。
ではEF66は?
EはElectric=
電気機関車で、Fは動軸の数(6)、66は最高速度が85km/h以上の直流機を示すのだそうだ…。

えーっと、せっかく教えてもらってるのに悪いんだけど、もうどうでも良くなってきたよ…。

我々の乗る、10号車の前で記念撮影をし、車内に乗り込む。
少し歩いて席を見つけると、肩から重い荷物を降ろして、ふぅっと大きく息をつく。
さあ、ここからが本当の旅の始まりだ!


「靴脱いでい〜い?」
早速くつろいでいる様子のよっすぃー隊員。
カズ隊員は、椅子にちょこんと座って、周りをキョロキョロ。
どうやらまだ落ち着かない様子。
その点でよっすぃー隊員は、先輩隊員だけあって旅歴が違う。
マイスリッパを持参し、それに履き替えると、車内を散策し始めた。
我々の乗ったB寝台開放は、2段ベッドが向かい合った感じで、それぞれカーテンで仕切られるようになっている。
個室にしようと思ったが、オープンな感じのほうが旅情があって好きなので、開放に。よっすぃー隊員やカズ隊員に、公共の乗り物に対してのマナーを教えるのにもちょうど良い。

『かわいい我が子は隣のクソガキ』

これは、どんなにかわいい我が子でも、赤の他人から見ればうるさいクソガキにしか見えないという、他所サイト様で見た「F1観戦マナー」の1つなのだが、全く持ってそうだと思う。
向こうも同じ料金を払って乗っているのだ。
「静かにね」
人差し指で唇を押さえる。

その時、ガタンッ、と衝撃があってから、ゆっくりと走り出したのがわかった。

――― 18時03分、東京駅発。
長いホームを抜け、だんだん加速していくのがわかる。
よっすぃー隊員とカズ隊員は、窓際にくっつき、必死でホームを歩く人に手を振っていた。

中には、手を振り返してくれる人もいて、大喜びのよっすぃー隊員。
都会の人は他人との関係が希薄だと言うけど、優しい人もいるのね…とその人にお礼の意味で会釈しながら失礼なことを思う。(失礼極まりない)
ほぼ同時に出発した隣の電車が、我々の乗った列車の横を、あっけなく抜き去る。
ブルートレインはのんびりなのだ。
各駅停車のその電車は、少しすると減速し、停車した。しかし追いついた頃には、乗客の乗り降りも終わり、また少しすると抜かれてしまう。
線路が離れていくまで、いたちごっこ、ねずみごっこ…なのである。

チャイムが鳴り、車内放送が始まる。
「まいど〜、ご乗車いただきまして〜」
すかさず真似をするよっすぃー隊員。
楽しいひと時を過ごす。

机に栓抜きが付いているが、時代は缶ビールなのだ… ▲車窓からの眺めが一番の肴 ▲通路部 ポケモン弁当¥1000.シールとハンカチが付いてくる。


駅弁は、「鳥めし」。
よっすぃー隊員とカズ隊員は、東京駅に着くなり目星を付けていた念願の「ポケモン弁当」で。
食べかけて、写真を撮っておけばよかったと慌てて撮った。

タイチョーは、少しぬるくなったビールを舐めなめ、車窓からの眺めをゆっくり楽しんでいるようだった。
これこそ鉄の究極の至福の時間ですよ。

ブルートレインの歴史は1958年に登場した「あさかぜ」に始まり、そう長い歴史でもないのだが、車両はそのまま使用されているためはっきり言って古い。
今我々が乗っている、当時の最新かつ斬新であっただろう車内は、約35年前のそれと変わらず、清潔感はあるが、やはりトイレや洗面台などの設備に時代を感じた。窓際の机には、栓抜きがあり、さすがに瓶ビールは持ち込まんよ〜と思ったが、これも当時では便利なものだったのであろう。
新幹線で東京まで来た我々には、逆に新鮮で、レトロ感がたまらなくいい。
何だろう、この懐かしさ。
ゆったりとした新幹線の座席より、不思議と落ち着き馴染む直角の座席(笑)




しばらくすると、車窓から見える空に色がなくなって、代わりに、家路に向かう車の赤いテールランプが並んでいるのが見える。

マンションの窓にポツリ、ポツリと明かりが灯り、駅の近くの商店街ではネオンが光りだす。
誰とも知らぬ他人の、何気ない日常の、何気ないワンシーンを切り取って並べたような感じ。
それを、特にすることもなく、しないといけないこともなく、ただ窓から眺めている。
字幕のない外国の映画を、ただ眺めているような、そんな感覚。
なんて贅沢な時の流れ。

ガタン、ガタンという一定のリズムの中、ゆっくりと時間が過ぎていく…。


浜松の手前になると、車内放送がある。いわゆる「おやすみ放送」だ。
明日の予定到着時間等と、今日の放送を終了し、照明を落とすという内容の説明がある。
よっすぃー隊員とカズ隊員は、それより前に既に寝易い格好に着替えていて、放送と同時に床に就いた。

東京駅で走り回っていた二人の、欠伸が寝息に変わるまでにそう時間は要らなかった。
ここからは大人の時間である。
車窓からの眺めを楽しみつつ、こそ〜っと裂きイカをかじる。
もっとお酒を買っておくべきだった。
ホタテの貝柱を口に放り込みながら後悔。
照明が落ちると、乗客は皆カーテンを引き、それぞれ自分の時間を愉しんでいるようだ。
車内は静かになり、必然的に我々も小声で話す。
時折、道路沿いの踏み切りの音が聞こえ、それに耳を澄ませ、会話が途切れる。
「何かいいねぇ…」

夜が更けていく。


気付けば、頬杖をついたまま眠っていたようだ。
タイチョーは飽きもせず、外を眺めている。
カズ隊員が寝返りをし、横を向いたところで隣に滑り込む。
「寝るね」
さすがに落ちたらヤバイな的高さなので、タイチョーが、上段のベッドで。
そしてチビ共二人で寝させて、その向かいで私が寝るつもりだったのだが、よっすぃー隊員が向かいのベッドを独り占めしてしまったので、ワタシとカズ隊員で寝る羽目に。
さすがに狭い…。
でも眠さには勝てなかった。
そのまま、午前4時まで眠ることになる。

「もうすぐ福山よ」
タイチョーに起こされ、むくっと起き上がる。
普段は絶対通り過ぎることのない駅。
しかし今日は、車窓から通過する駅を見る事が出来るのだ。
自分の住む町を通り越すなんて滅多にない事だ。
「さっき上りのブルトレとすれ違ったよ」
え!
それも見たかったなぁ。
一体いつから起きてたんだ…ていうか、もしや寝てないの…?
「何か寝れん」
しばらくして、見慣れた景色に気付く。
いつもは道路から線路を見ているのに、今日はいつも走っている道路を見ている。
こんな風に見えるんだ。
ああ、ここはいつもあそこにいく時通る道。
で、ここは前に通ったところ。
いつもと逆の視線で眺めるのも面白い。


F1レーサー並みの動体視力を持っていれば、もっと楽しめていたかもしれないが、「福山」という文字はあっという間に過ぎていった。
それでも何だか嬉しかった。
時間は4時を回ったところ。
もう一眠り。



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