■■Report #94 Report index
霊峰 大山 ―――


標高1729m(剣ケ峰)、中国地方の最高峰である。
西から見た山容が富士山に似ている事から『伯耆富士』とも呼ばれる。
一方、北壁は崩落した岩壁の見える荒々しい様相を見せる。

『出雲風土記』では、「大神岳(ほのかみだけ)」と呼ばれ、三瓶山と大山に縄をかけ引っ張って来て出来たのが島根半島だという国引き神話にも登場する。
奈良時代に山岳信仰として開かれたと言われ、「大神山神社」「大山寺」をはじめとする神社、寺社、仏像等が多数存在する。

大山登山を諦めた我々へなちょこ登山部は、この大山古刹巡りをすることに。

木漏れ日の落ちる大山夏山登山道を外れ、遊歩道を行く。
登山道すぐのところに石で出来た鳥居がある。
鳥居には、「三寶大荒神」とある。

ここはその昔仏教でいう三宝(仏・法・僧)を守る神「三宝荒神」が祀られていたという。
今は足元に草が生い茂り、古い鳥居が残るのみである。


その先の大きな杉が並ぶ小道を少し奥に歩くと「大山寺阿弥陀堂」がある。


「大山寺阿弥陀堂」は、国の重要文化財に指定されている室町末期の建物
中の阿弥陀如来は事前申し込みが必要との事で見学はできなかったが、ツアーと思われる多くの観光客が拝観していた。


境内は自由に散策でき、阿弥陀堂の正面には「基好上人の墓」がある。

この基好上人(きこうしょうにん)は今から約850年前、大山の広大な裾野を利用して、牛や馬の放牧や蕎麦の栽培を奨励した人だそうだ。
「大山そば」が食べられるのは彼のおかげと言うわけね!!!

一度夏山登山道へ戻り、僧兵コースと呼ばれる山道へ。
のんびりと花や木を観察しながら歩く。



道は整備されているが、片側は崖。
「あのな〜この葉っぱな〜」
ふらふらと横や後ろを見ながら歩くカズ隊員に、気が気ではない。
わーーーーーーーッ!前見て前ッ!!!

途中、木が倒れていて、斜面が崩落しているところも。

「前方は、倒木により斜面が崩落しています。通行される際は、落石等に十分注意してください。」

な、何をどう注意しろと!!!

ドキドキしながら横を通過。

木は根元から見事に抜け、地上にその根を露にし、横たわっていた。

その後、「氷室(風穴)」という看板を発見。
昔この付近は養蚕が盛んで、氷室付近に降った雪を踏み固めて蚕の種を保存した、と書かれていた。

坂を上がって覗くと、大きな穴があった。

草や木に囲まれて埋もれてはいたが、不自然に四角いそれは人工物であることがはっきりと分かった。

天然冷蔵庫である。

種を取り出した後の雪(すでに固まって氷になっている)は、町に運ばれ『大山氷』として珍重されたのだそうだ。
まだ電気も無い頃の話だ。

風穴を少し行くと、「釈迦堂跡」「金剛童子跡」という看板。
ここ
一帯が、最盛期には100を超える寺院と3000人以上の僧兵をかかえるほどの一大勢力として栄えていた。
今の草ボーボー状態では全く想像できないのだが、ここにも釈迦堂が建っていたらしい。

さらに少し進むと河原に出た。
南光河原だ。


岩に腰掛け靴を脱ぎ、足を浸す。
沢の水は冷たく、汗がすっと引いていく。
お茶を飲みつつ、あたりを見回すと、奥のほうにケルンがあった。

この少し上流には「賽の河原」なんてところもあって、まさにここは供養の場でもあるのだろう。

すっかり汗も引いて、さてもう少し歩くか!と立ち上がる。
いよいよ目的地である。


大山寺本堂。
大山栄華の象徴である。

本尊は地蔵菩薩。
俊方という人が、ある日大山で鹿を射止めたらそれは鹿でなく地蔵尊で、殺生の罪が深いことを悔いて地蔵尊を祀ったとされる。
本堂は、1928年焼失したものを1951年に再建したもの。


本堂横には、「宝牛」という像があり、別名「撫牛」といい、一つだけ願い事を念じながら撫でると願いが叶うという。
昔、この辺りで牛馬市が盛んに行われており、牛の霊を慰めるために、その牛の鼻ぐり(鼻輪)で鋳造されたものだそうだ。
慰霊の目的なのに願いを叶えて貰おうだなんて人間って何て欲深いの…と思いつつ、牛を撫でる。(やっぱり撫でるのか)

大山寺は、参道からもお参りできるので、境内には細いヒールやサンダルの人、乳児を抱いた人もいて、さっきの山道を歩いて来た我々は一瞬「えっ?!」という感じになる。
しかし土産物屋やギャラリー、食事処の並ぶ石畳の参道側から来た人たちから見れば、我々は何と暑苦しく見えることか…。


参道には山門があり、大きな木が良い雰囲気を醸し出している。
大山登山をする人の中には、この大山寺を参拝してから登る人もいる。


ちなみに参拝は、基本志納額→大人300円、小人200円、団体20名様以上割引有。
志納だが割引があるという不思議なシステムなのは、宝物館「霊宝閣」の入館料を含むからか。

我々は参道沿いにある土産物屋に入り、大山牛乳を使用したアイスクリームを食べて、このトレッキングの締めにした。




今回はこれで終わりとする。
しかし周辺には、ゲゲゲの鬼太郎で有名な水木しげるの妖怪画で天井を埋め尽くした「圓流院」、日本最長の自然石で作られた参道をもつ「大神山神社奥宮」など、見所は他にもたくさんある。

大山=登山ではなく、こうしてのんびりと自然を満喫しながら古刹を巡る、そんなスタイルもあるのだと苦し紛れに発見した、我々へなちょこ登山部であった。

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