■■Report #32 Report index

昨日、車で通りかかった時は、なんとも思わなかったのだ。
なんとなく見たニュースで知る衝撃。


―――造船所のクレーンのライトアップ今月末終了
          工場の再活用計画で撤去申し入れ


「うっわ、じゃあ昨日写真撮っとけばよかったよ〜」
「じゃあ今日撮りに行く?」
「…いいねぇ」


広島県尾道市向島町。
映画「男たちの大和/YAMATO」のロケセットの舞台となった日立造船向島西工場。
そこの6基のクレーンが、2年ほど前からライトアップされているのは有名だ。

広島の夕方の某ニュース番組で、CMに入る際、「尾道千光寺公園からの眺め」と中継映像が流れるのだ。
以前、生で見たいと夜ふらっと見に行ったら、時間が遅かったせいで消えていた。
それで、昨日、やっと初めて見たというのに、あと数日で終了とは…

「普段、あの道通らんしねぇ」
「近いからわざわざ見に行かなくても、って思うもんなぁ」


今月末、すなわち8月31日までにタイチョーの休みはもうない。
「うっわ、じゃあ昨日写真撮っとけば…」
それで今、尾道にやってきているのである。
午後9時を過ぎた尾道駅周辺は車もまばらである。

しかし歩行者の数は割と多く、自転車を押して歩く人、ベンチで語らう人、カメラ片手の観光客、犬を散歩させる人…
綺麗に整備され明るいせいか、とにかく人が多かった。
夜の駅前に子供連れて行くのはどうかしらと思ったいたが、思わぬ活気に驚いた。


クレーンが見える海岸沿いの道路にあったコインパーキングにへなちょこ1号を停め、カメラを取り出す。
路上駐車をしている車も多数見うけられたが、タダでキレイな光景が見れるのだ、尾道に数百円落として帰るのも悪くない。
車からよっすぃーを下ろすと、夜のお出かけにワクワク気分が隠せない様子。
待ちきれなくて、早くぅ、と催促される。
夜に出かける為、遅めに昼寝をさせたのでかなり元気だ。

道路をわたり握っていた手を離すと、板張りの遊歩道を駆けだす。
「きゃ〜」
…嬉しいのはわかった。
でももう夜だから静かにしろ…。
彼女にとってはライトアップより、夜の歩道の方が嬉しいらしい。
カズ隊員はベビースリングで抱っこだ。
まだまともに歩けないくせに、気分だけは駆けていった姉ちゃんを追いかける気満々で、足をばたつかせていた。
いや、暴れたら落ちますから。
「うきゃ〜!」
…アンタも静かにしなさいっ!



タイチョーは黙々と写真を撮っていた。
6基のクレーンにはそれぞれ4灯の水銀灯が取り付けられ、これにカラーが付いている。


白、緑、青、赤、橙…以前は紫もあったようだ。
サイズも形もバラバラなクレーンに、色とりどりの照明。
無機質なはずの産業遺構は、光を与えられ活き活きと輝いている。
尾道水道の水面にクレーンの光が落ち、時折通る船がそれを揺らして、いっそう幻想的なムードを醸し出している。
角度を変えれば、またその表情を変え、幾何学的な模様が重なって面白い。

今更だが、これやめちゃうの、もったいないぁ…。
なんでやめちゃうのかというと、
工場の再活用計画により照明設備が支障となるため、照明機材等を撤去してほしい」と日立造船側が尾道市に申し入れしたから、なのだそうだが、最初からそういう約束だったのなら仕方ない。
最後の最後で生で見れたからいいか。


▲水面に長く伸びる光の帯
角度を変えればまた違った顔に…

8月31日(木)の夜10時で、終了するらしいので、心残りな方はお早めに…。

なんだか、大和のとき(Report#21参照)といい、今回といい、駆け込みセーフな感が拭いきれないが、それも仕方がないことだ。
なんてったって近すぎる!
―まぁ近いからいいや。
―すぐ行けるからいいや。
―またでいいや。
こうして延び延びになっていたのだ。


対岸の美しい光を眺めていると、本当に惜しい気がするが、尾道の魅力は何もこれだけではない。
ライトアップは終了しても、古くからある文学の町、坂の町、映画の町として、尾道には頑張ってもらいたい。
なぜなら、旅先で「何処から来たんですか?」と聞かれた時、「福山」を説明するのが楽だからだ。
「福山です。え、福山?ああ、尾道の隣の街です」みたいな。

福山より有名だから仕方ない。
だから応援しているのだ(笑)

そして今度は昼間にのんびり尾道観光をしたいね、と話す。

新たな探険の課題を考えつつ、カメラをしまう。

ライトアップが終了するのは残念だ。
しかし終了することにならなければ、来なかったかもしれない。
尾道を訪れる機会として、そして再び訪れようという気持ちになったことで、最終的には良かったのではないか…。
残りあと僅かな尾道からの眺めを見てふとそう思った。
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