春をさがしに
4月1日、鳥取県日野川。
朝から雲一つない晴れた空の下、解禁1ヶ月過ぎた川の中にいるのはナベ隊長とミキ隊員。
隊長は釣りのため、ミキ隊員は別の目的で。
「これね、カエデが調べたのよ」
先日、小学校から帰ったカエデ隊員(※ミキ隊員の姪で小学生の女の子だ)から1枚の紙切れを渡された。
『春をみつけた』
そう書かれた紙には、カエデ隊員の身近な人達の名前と、一言ずつ何か書かれている。
どうやら皆に『春』をテーマに、何を見つけたか聞いて来たらしい。
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がっこうからかえってくるときにあたかい。 |
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駐車場でたんぽぽをみつけた。 |
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桜の開花予想をきいた。 |
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菜の花が咲いていた。 |
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黄砂。 |
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「春かぁ…」
ミキ隊員は春といえばやはり桜を思い浮かべるが、オオイヌノフグリという花を見ると春がきたなぁ、と感じる。
道端に咲いているのを見たのだ。
隊長は、「渓流の解禁」に春を感じるそうだ。
中には花粉の量で春を感じる人も、天気予報の気圧配置で季節を感じる人もいるだろう。
季節の移ろいとは、なんとなく感じるものであって、あえて探すことなどはまずない。
しかし今回、カエデ隊員がそれを調べて見せてくれたので、あえてやってみることにした。
そんなわけで、今山の中にいる。
「春〜春〜♪(作詞作曲ミキ隊員)」
などと歌を歌いながら、カメラを片手に川の中を歩いていると、ナベ隊長に怒られた。
「こりゃ!今その先を狙おうとしてたんじゃけど!」
今シーズンまだ遊漁券を買っていないミキ隊員は、今回釣りはせず撮影班の業務に徹しているので、思わず一人で奥へ奥へと先行してしまった。
ポイントを荒らされた隊長は苦笑い。
ここは以前にも釣ったことのあるお気に入りのポイントで、比較的川にも入りやすく遡行しやすい。
ミキ隊員は、春を探した。
ふきのとうが出ていた。これはもうトウがたっているが、もうちょっと小さな芽を天ぷらにして食べると、独特の苦味があっておいしい。
ミキ隊員が春を感じる、という小さな青い花、オオイヌノフグリもたくさん咲いていた。これはちょっと触っただけでも花が落ちてしまう繊細な感じが好きだ。
ヤナギの木が、ふわふわの新芽をたくさんつけていた。
ナベ隊長はそこでしばらく振っていたようだが、当たりはなかったようだ。
次のポイントへ移動する。
少し下流のほうで、車を停められる所があったので、そこへ車を残し、川へ向かう。
初めて行くポイントだ。
「どうかなぁ…」
首を傾げつつ、何度かキャストしている隊長。
ミキ隊員は、春の調査に夢中になっていた。
ここにはスミレが咲き、ツクシが顔を出していた。その横からはスギナも出ていた。
ツクシは、春のポピュラーな山菜だ。ちなみにスギナも若い芽なら、乾燥させてお茶にして飲むことが出来るらしい。
「あっ…」
隊長の声に反応して振り返る。
「そこそこそこそこ!」
ナベ隊長の示す先には、ミノーについてくる魚影が!
あれはパーマーク?なんて目を凝らすと、ヒラリと身をかわして流芯に消えていった。
「おるおる!」
活性のあがる隊長。
それから、2、3回キャストしたのち、ナベ隊長の歓声が上がった。
「ヒットォ!」
引き寄せたそれは25、6cm程のヤマメ。
流れにそっと放すと、元気良く飛び出して行った。
「リリースする瞬間を撮ろうと思ったんだけどな…」
元気すぎて、一瞬の出来事だった…笑。
車はそのままに、少し歩いて移動し3つ目のポイントへ。
先ほどのポイントより少し流れが緩く、瀬ありトロ場あり、といった感じ。
歩ける距離もあるのでしばらくそこを攻める。
ミキ隊員は陸を攻める!
これはウバユリの若苗かなぁ、これも食べられるんだよなぁ。食べたことはないけれど…植物図鑑片手に川沿いを歩いていると、先を行く隊長の声。
「来た来た!」
転びそうになりながら駆け寄ると、ネットにヤマメがおさまっていた。
今度のは最初のより少し大きい。
模様もはっきりしていて、きれいな色だったが、放流モノとわかるヒレの形。
これも春ならでは、ということか。
日が暮れ始め、そろそろ納竿しようとナベ隊長。
せっかくなので、土手沿いに生えるツクシをとりながら車へ向かう。
今夜は卵とじにしよう。
ひとりニヤリと笑うミキ隊員。これも春ならでは、なのだ。
「ちょっとよってもいい?」
ナベ隊長の触手をくすぐる何か、があったらしく、帰り道を一本それてどこかへ向かう。
遠くに線路が見え、レンゲの咲く田んぼの続く道沿いに、小さい川が流れている。
少し広くなったところに車をとめ、何本か振ってみる。
しかし当たりはなかったらしく、すぐに帰って来た。
近くにダムがあるらしく、ニジマスの放流ポイントがあるらしくそのバックウォーターにいってみたいという。
別に急いで帰ることもないので、ついでに行ってみることに。
この探険隊、寄り道が大好きである。
そして次の課題を見付けては、宿題として次回の探険の口実を作るのだ。
ダムサイドには先客がおり、そこから少し離れた所で竿を振る。
ミキ隊員はタラノキを見付け、タラノメはまだかなぁと観察していた。
サクラの花が満開を迎え、淡いピンク色の花びらを揺らしていた。
写真を撮っていると、その先客の彼がやってきて、ここはブラックバスの有名なポイントなのだと教えてくれた。
こんな所にまでバスがいるんだな、と思う反面、ここで同居しているニジマスの逞しさを思い浮かべると、外来種ってタフだなぁと感心した。
カエデ隊員が「春を見付けた」というテーマを与えてくれたので、春を探しに行ってきたが、気を付けて探さないと、普段見過ごしているものがたくさんあった。
意識していないと、春なんてあっという間に過ぎてしまうものなのだ。
帰り道、「道の駅」でツバメを見た。
もうそんな季節なのだ。
本当はまだまだ書ききれないほどの発見があった。
でもあえてこれ以上は書かない。
それは、これを読んでいるあなたに探してもらいたいのだ。