■■Report #01 Report index

日野川に尺ヤマメを追う

9月27日、秋の気配も深まり、コスモスの花が道路沿いに咲いている鳥取県日野川。

わずかに太陽の輪郭が見てとれる薄曇の空の下、竿を振る者二人。
禁漁も間際になり悪あがきする、ナベ隊長とミキ隊員である。

「どこか行きたいなぁ〜」
ぼそっとつぶやく隊長に入れ食いのミキ隊員。
秋の澄んだ空が、最近こもりがちだった二人を誘う。
しかしTVでは、生憎の雨の予報。雨のドライブでもするかとたずねる隊長。
「隊長、釣り行こう、釣り!もうじき禁漁よ」
渓流での釣果が思わしくない私は、新しい竿をGetしたことも重なって、禁漁までの最後の休みとなる27日に、ぜひとも挽回したいのだ。
10月1日からは、ヤマメの生息するこの川も、水産資源保護のため禁漁となる。その前にぜひ会いたい。
名目は…ヤマメの生息調査か?
『シーズン中に放流魚は釣りきられてしまうのか?!!!』なんてタイトルが頭に浮かび、苦笑いした。

そして27日、運良く雲もうすれ、垂れた糸の先の流れには淡い光が反射している。
春先に何度か入ったポイントを2kmほど下った所にある広場に車をとめ、生い茂った草を掻き分け入渓。
もう一時間は経っただろうか、少しずつ移動しながらキャストを繰り返しているが、ラインに反応はない。
時折、スプーンを追って黒い魚影が確認できるが、動きからしてヤマメのそれではない。
家で待つ副隊長に、『ここにはヤマメの生息は確認できなかった』…という報告ではあまりにも切ない。
そんな思いが前面に出てしまう私に、彼らは殺気を感じてしまったのか一向に出てこない。
はぁ、とため息を一つついた時だった。
「ヒット!」
後ろで隊長の声。反射的に振りかえる。
「ネットかして、ネット」
え、ネット?隊長も持ってるのに…と思いつつ急いで駆け寄る。
隊長の足元に、必死に抵抗する小さい影。
そっとすくってやると、そこには…

15cmほどの小さなアマゴ。
なるほど、ナベ隊長の目の大きなネットではこぼれおちてしまう…。
その意味を理解し、顔を見合わせ思わず笑う二人だった。
ナベ隊長の話によると、スプーンに反応がなくミノーに切り替えた直後のヒットだという。
自分の体の半分近くもあるルアーに飛びついた彼の勇気に敬意をしめしつつ、また来年会おうとリリースする。
本来はヤマメ流域のこの地域に、朱点が少し悲しかった。

それからしばらく遡行したがこれといった当たりも感じられず、これ以上進めない渓相に変わったのを機に、ヤブこぎをして川を出る。
ものすごく進んだ気がしても、車は目に見える距離にあるから不思議だ。
川沿いの畑にはコスモスの花が植えてあった。
車に乗りこみ、次のポイントへと向かう。

  
その後も何箇所かまわり、懸命に振ったミキ隊員であったが、後ろで「ヒット!」と声をあげる隊長とは裏腹に、全く(!)釣り上げることができないまま日没を迎える。
隊長もヒットはあってもフックアップできず、本日の釣果はこれ一匹におわる。
でもいいじゃん、ボウズじゃなかったんだから。
その一言にはくやしさと羨ましさがこもる。

ウェーダーを脱ぎ、納竿しているとポツ、ポツと大粒の雨。
「来るぞ」
急いで車に乗り込んだ直後、ザァーッという音が窓をたたき、一瞬にして辺りの景色をかすませる。
まさに間一髪、である。
そして今ごろ川では、あのちびアマゴが水面に雨粒が奏でる音をききながら、我が身の無事を喜んでいるのだろう。
それを岩陰から、ピンとしたひれを動かしながら大きなヤマメが微笑んでいるかもしれない。
そんなことを考えながら帰路にむかう。
雨のせいでいつもより暗い空を恨めしげに見上げながら、このどんよりした雲はまさに自分の心の中のようだと思う。
しかし雨に遭わなかったのは、不幸中の幸い、せめて天気くらいは…という神様の計らいだったのかもしれない。

結局、ヤマメに会うことはできなかった。
今年春に会ったあのヤマメは釣られてしまったのか…それともルアーが巻かれていくのを岩陰からそっと覗いていたのか。
願わくば、後者であってもらいたい。
その手には乗らないよと、少し赤くなりかけたからだで笑っていて欲しいのだ。
「ヤマメ、いませんでした」
副隊長に報告する。
ヤマメの生息は確認できなかった。
しかしあの川には、いる。絶対いる。
私達が会えなかっただけなのだ。情けないが。もう釣りやめようかな〜なんてつぶやく。

いいや、来年こそは!
遊漁証を眺めながら決意を固める。
来年こそは?
来年こそは!
毎年言っているかもしれない。
まぁ、なんといっても「へなちょこ」なのだからそれも仕方ない…

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